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2023.3.28

デニム再生プロジェクト(8)後加工

MD本部バイヤー / 橋 祐介

「デニムの再生」への挑戦が始まってから約一年。
長かったような、あっという間だったような…
激動の一年でしたが、いよいよ今回で最後の工程です。
前回、木次ソーイング様で縫製を終えた
デニムパンツは、完成度・品質を
向上させるために「後加工」を行います。
島根県から岡山県井原市に移動し、デニムの洗い加工に
定評のある西江デニム様へ向かいました。


迎えてくれたのは、株式会社西江デニムの
西江代表取締役社長と、製品部の吉町部長。
50年以上デニムを洗い続け、その数なんと1億本以上!
日本が誇る確かな技術に迫りました。


まず、生のデニムパンツを受け取ってから
完成イメージに合わせて、工程を組み立てます。
今回、4月発売に向けて本澤氏と目指すのは、
「リンス」と呼ばれるワンウォッシュの仕上げの商品。
普段のエイジング加工よりも工程は少ないのですが
10月発売予定の新作にはエイジング加工も検討中なので
様々な後加工の様子をご説明いただきました。


最初の工程は、「シワ取り」から。
これまでの加工や縫製時にできた折りジワや糊を
落とすため、スチームアイロンで丁寧に処理します。

シワ取りが終わると、全工程の中でも
特に高い技術が必要な「シェービング」の工程へ。
古着のような風合いを目指して
「ヒゲ」と呼ばれる腿に入れるアタリ(擦れた跡)や、
キレイに見せるためのさりげない陰影など
様々な工夫が施されることで
デニムパンツに命が吹き込まれていきます。
左右の前身頃と後身頃はもちろん、前後のポケットや
あまり目立たない膝の裏まで!
仕上がりのイメージに合わせて、あらゆる箇所を
専用ローラーとやすりでシェービングします。
ベテランの職人ならではの技術を
ぜひこちらの動画からご覧くださいませ。
機械化できない訳がお分かりいただけるかと思います。

シェービング後は、
専用の機械にパンツを穿かせて、シワの具合を調整後、
熱と蒸気で固めていく「立体加工」。
メンズのデニムでよく見る、長年穿きこんだような
シワは、こちらで再現されます。

また、デニムファンにはお馴染みの
「ストーンウォッシュ」も見せていただきました。
巨大な機械に大小様々な軽石を入れて、豪快に回転。
自然で程よいダメージと色落ち、
着古したような柔らかな風合いが表現されます。
軽石だらけになったデニムは、別の機械でキレイに。
(この工程がかっこいいのでご注目!)
見違えるような風合いに、多くのブランドが
「ストーンウォッシュ」を選ぶのも納得。

加工が終わると、シェービングでは行き届かない
より細かな箇所の「削り」に移ります。
職人の繊細で滑らかなローラー捌きによって
裾やポケットの縁等が、みるみる立体的な仕上がりに。
普段お店で何気なく見ているデニムは
こうした細かい技の積み重ねによって生まれています。
ぜひ一度、デニムパンツを隅々まで見てみてください。
なぜ日本のデニムがこんなに美しいのか?
その理由が、あらゆる箇所に詰まっています。

イメージ通りに「削り」ができると、
続いては「洗い」の工程へ。
丁寧にもみ洗いを行うことで
履きやすく縮みにくいデニムになります。
乾燥させてからアイロンでシワを伸ばして、検品へ。
もちろん、検品も人の目で行います。
職人さんによる手作業の多い「後加工」ですが
普段から不良率は1%以下!さすがの品質の高さです。
検品を終えたら、遂に再生デニムパンツの完成!

できあがったデニムにテンションが上がり、すぐに撮影!笑

いかがでしょうか。
見た目で分かるわけではありませんが、
みなさまからお預かりしたデニムが、
確かに含まれています。2022年4月の回収から約1年。
時間をかけて取り組んできたプロジェクトなので
喜びもひとしおです。商品の詳細については
追ってお知らせいたしますので、もう少々お待ちください。




最後に、僕が感銘を受けた
西江デニム様の環境に配慮したお取り組みについて。

デニムの生産は染色だけではなく、後加工の部分でも
環境負荷が大きいという指摘があります。
具体的には「洗いによる、水の大量使用」と
「ストーンウォッシュによる廃棄物」が挙げられ、
この2つは後加工の中でも重要な工程です。
個人的にも改善は難しいと想像していましたが
西江デニム様では既に挑戦が始まっていました。
ECOBLUE CHALLENGE。
「自社の技術を守りながら、
 環境への負荷をなるべく減らす」

まず「水の大量使用」問題には
1960年代から自社工場内にろ過処理施設を整備し、
魚が住める程のきれいな水にして自然に還していました。
さらに2020年には、ろ過の3次処理施設を整備。
今では洗い加工に使用する水は、ほぼ100%、
自社でリサイクルした水を使用。
これにより、年間 約5,500万リットルもの水を削減、
お風呂のお湯約3万杯分の節約を達成しているとのこと!
(リサイクル水は飲料水検査をクリアするほどキレイ!)
水が豊富な街、井原で、洗い加工をメインに創業した
企業だからこその、水を大切にする姿勢に感銘を受けました。

そして、「ストーンウォッシュによる廃棄物」。
加工の際に削れた軽石の砂のようなものが
廃棄物になるという問題がありました。
西江デニム様では、水処理施設内で
その砂を肥料としてリユース。また、軽石と合わせて
削れにくいエコストーンを併用することで
廃棄物ゼロの「ストーンウォッシュ」を実現しています。

このように、デニムの生産現場では、
地球環境を守るための飽くなき挑戦が続いています。
僕たち百貨店もより一層の危機感を持ち、
さらなるアクションを起こしていきたいと思います。

さて、8回にわたってお届けしてきた
デニム再生プロジェクトのレポートも今回が最後。
完成までお付き合いいただき、ありがとうございました。
4/12(水)の発売まで、もう少々お待ちください!

BUYER HASHIS  PROFILE

橋 祐介 / バイヤー

橋 祐介 / バイヤー

古着屋でのアルバイトに没頭した学生生活の後、特選(ラグジュアリーゾーン)のバイヤーと兼務で、本プロジェクト担当。名画座と純喫茶が好き。

岡田 ひかり / 化粧品バイヤー

岡田 ひかり / 化粧品バイヤー

化粧品の自主編集売場を担当。もんじゃ焼きが好き。趣味はクラシックバレエ。人生もバレエもバランスが大切。